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2007年度学習会@ 農業濁水見学会
八幡山から  代かき時期に顕著に見られる農業濁水が琵琶湖に与える影響について、近年窒素やりんの負荷、農薬の流出に関する研究が進み、滋賀県では濁水防止の取り組みが進められています。
 琵琶湖市民大学では、学習会の一環として、まずは現場を知ろうということで、2007年5月3日に近江八幡市の白鳥川河口でその様子を見学し、周辺地域が一望できる八幡山の頂上から、湖岸が濁った琵琶湖の様子や周辺の農地、集落を眺めました。
白鳥川  琵琶湖には大小合せて400本以上もの流入河川があり、滋賀県の面積の約96%が集水域となっているため、琵琶湖は滋賀県を写す鏡とも言われています。また、滋賀県は兼業農家率が89.6%と高い(全国3位:2005年農業センサス)ため、ゴールデンウィークの前半の4月29〜30日に代かきをして、後半の5月3〜5日に一斉に田植えをするのが恒例となっています。代かきによって濁った水が、田んぼから流れ出て、排水路や河川を経由して一斉に琵琶湖に流れ込み、琵琶湖の湖岸が広範囲にわたって土色に染まる「農業濁水」も恒例となっています。滋賀県では化学肥料や農薬の使用量を減らし、自然環境と調和の取れた農業生産と安全安心な農産物の供給を「環境こだわり農業」として認証して推進しているため、濁水防止の取り組みも県を挙げて進められています。山からの見た目では琵琶湖の湖岸は2〜300メートル沖まで見渡す限り全域が土色に染まっていました。直下の白鳥川だけでなく、日野川、宇曽川など周辺地域の河川からも同じように濁水が流れ込んでいるそうです。
白鳥川河口  白鳥川河口に移動して、濁った川を間近に見て、台風後の川のようなその濁り具合には驚きました。まさに「百聞は一見に如かず」です。県の調査ではこの時期の白鳥川の透視度は10センチ未満だそうです。白鳥川は流域面積3920(ha)のうち、2006年度の水稲作付面積が1460(ha)とのデータが示すとおり、代かきをした田んぼと同じ色をしていました。コンクリート張りされた川幅6mほどの白鳥川は、田んぼの中をまっすぐに流れ、湖岸道路をくぐって琵琶湖に流れ込んでいました。
航空写真1970年航空写真1982年
航空写真(1970年)航空写真(1982年)

勉強会の様子  午後からは、ほ場整備や降雨と農薬流出について勉強会を行いました。この地域の1970年と1982年の航空写真を見比べると土地の様子は一変していました。細い水路に沿ってパズルのように仕切られていた田んぼが、コンクリートで固められた川(水路)を中心に四角い大きな田んぼに変わっており、複雑な地形だった湖岸には湖岸道路が建設されていました。灌漑事業やほ場整備による生産性の向上が米の収量増加と労働力の軽減には大きく貢献したのでしょう。しかし、用水と排水が分離されて使う水の量が増え、川や水路のコンクリート化や内湖の埋め立ては自然浄化作用を減らしました。兼業農家の増加も影響して、農業濁水は起こるべくして起こった問題と考えられました。
 農業濁水には農薬のほか栄養塩類が含まれています。琵琶湖に流入した際には農薬(特に除草剤)が水草の生育に影響を与えたり、栄養塩類(特にリン)が植物プランクトンの栄養源になり水質の悪化を招いたりと、さまざまな要因が相互に影響しながら働くため、調査・研究が進められています。濁水の流出量は降雨量の増加に伴って増加するため、農薬や栄養塩類の流出量(負荷量)も増加します。それだけでなく、濁水中に含まれる微細な土壌粒子との吸着性が流出量に大きく影響することが最近の研究で明らかになっています。琵琶湖への環境負荷を減らすためには、単に使用量を減らすということだけではなく、土壌吸着性に配慮した農薬や肥料の選定が必要でしょう。
 県内のいたるところに「濁水防止」と書かれた鮮やかなスカイブルーののぼりが立てられていたこと、山から眺めていて、田んぼの土色に混ざって一部の区画は鮮やかな緑色だったのが印象的でした。この緑色は休耕田を利用した小麦栽培が盛んだからだそうです。
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