合宿・水俣市民大学2008

エクスカーション2

石垣跡
山方面 産業廃棄物最終処分場建設計画地見学
 山方面では計画地周辺の散策と河川の水質調査を行いました。始めに木臼野地区から計画地ふもとの湯出小学校・中学校への林道を1時間ほど歩きました。以前は通学路だったそうですが現在は使われておらず、草木の生い茂るままの細い坂道でした。石垣を積んだ棚田跡や井戸跡が道沿いに残っていて、山深いとはいえ古くから人の生活があったことが知れる場所でした。

 今でも湧水を飲料水や棚田に使っているというお宅を訪問し、付近一帯の水の豊かさについてお話を伺いました。お話を聞きつつ実際に湧水を飲ませていただき、処分場建設による水汚染が大きな懸念であったことがよく分かりました。河川の調査は現地で水質センサー(堀場製作所U-22)による測定を行い、水は環境監視研究所に持ち帰って分析を行いました。河川の水質を検討してみると、生活排水や農業排水の流入は若干あるようですが、流下に伴う著しい水質悪化は見られず、良好な水質を維持しているといえそうです。結果は表1参照。

八幡プール調査 八幡残渣プールは、チッソがアセチレンを生成した際に出たカーバイド残渣を埋め立てた広大な廃棄物処分場です。一見すると小高い丘のように見えるだけなのですが、コンクリートの側溝は真っ白になっていました(左写真も参照のこと)。八幡残渣プール横の側溝は、電気伝導度が750と自然由来の数値とは考えられません。また強いアルカリ性でもあり、カーバイド残渣からカルシウム成分などが溶け出して溜まっているものと考えられます。

表1 水質の調査結果 2008年9月5日採水分 水質調査データ
海方面 水俣病患者多発地域 百間〜茂道見学
百間排水口  海方面は水俣駅の正面にあるチッソ水俣事業場の正門前、百間排水口と経由して、茂道、坪段地区を巡りました。水俣病の震源地ともいえる百間排水口ですが、現在は排水は流れておらず、湾が埋立地のエコパーク水俣となってしまったため、それと知らなければどこにでもありそうなコンクリートの水門にしか見えません。かつては、排水口の近くに船を止めておくと船底のフジツボやカキが取れて掃除ができる、と船をつないでおく漁師さんもいたそうです。

 茂道では現在も認定申請中であるという患者さんのお話を聞くことができました。水俣病の発生当初は原因が分からず「奇病」と呼ばれていたため、魚を食べていても自分には関係がないと子供の頃は思われていたそうです。「今考えてみると小さい頃から症状があったけれど、周りの同級生も同じような症状があったから、特に水俣病とは意識していなかった」というお話に、地域を襲った環境汚染の奥深い実態があるようです。患者を切り捨て、患者を被害者として認めようとしてこなかった国や県に対して、裁判を通して「被害者を被害者として認めて解決してほしい」と今も活動を続けられているそうです。
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